大使館・総領事館にできること、できないこと|領事サービスの範囲
公開日 2026-10-23
この記事のポイント
- 在外公館は情報の提供と書類の発給までを担い金銭の負担はしない
- 医療費や移送費の立て替えと病院との交渉は領事サービスの範囲外
- 災害時の安否確認はたびレジか在留届の登録が前提になる
海外で事件や事故、盗難に遭ったとき、日本国大使館・総領事館(在外公館)に頼めるのは、情報の提供と、日本の手続きに必要な書類の発給です。お金を出す、捜査する、相手方と交渉する、現地の手続きを代行する——これらは領事サービスの範囲に入りません。
立場別に、先に読むところ
1. 範囲を決めているのは、その国の法制度
在外公館の任務のひとつは、海外にいる日本人の保護と援助です。実際に、被害の相談は在外公館に寄せられています。
同年にフランス国内の日本国大使館や総領事館などの在外公館に寄せられた日本人の方の被害件数は133件です。
フランスの2025年の記載です。相談できる窓口であることと、できることに範囲があることは、両立します。外務省は、その理由をこう説明しています。
外国にはそれぞれ独自の法制度があり、日本人が関係する事故や犯罪についても、その国の法律が適用され、その国の行政・司法手続に従って解決する必要があります。
また、外国においては、必ずしも日本国内と同様のサービスや救済が受けられるとは限りません。
在外公館ができることには、おのずと限界があります。
場面が変わっても、線引きの形は同じです。
| 区分 | 在外公館に頼めること | 範囲に入らないこと |
|---|---|---|
| 情報 | 弁護士・通訳・医療機関の情報提供 | 専門的な法律相談 |
| 連絡 | 家族や関係機関への連絡の支援 | 相手側との賠償交渉 |
| 書類 | 旅券・帰国のための渡航書の発給 | 在留国の行政機関への届出の代行 |
| 費用 | — | 金銭の供与、費用の負担・立て替え・保証 |
| 権限 | — | 犯罪の捜査、犯人の逮捕、取締り |
共通する線引き
在外公館が担うのは、情報を出す、連絡をつなぐ、日本の書類を出すところまでです。お金と、強制力のある権限(捜査、釈放、処分の変更)は含まれません。
2. 所持金・所持品や旅券を失ったとき
窓口に行く前に、現地の警察への届出が必要になります。届出そのものは本人が行い、在外公館はその方法を案内します。
| 区分 | 在外公館に頼めること | 自分で手配すること |
|---|---|---|
| 届出 | 届出方法の案内 | 警察への被害届の提出 |
| 旅券 | 新規発給、帰国のための渡航書の発給(手数料がかかります) | 写真・戸籍謄本などの準備 |
| 送金 | 日本からの送金方法の案内 | 家族・知人への依頼 |
| カード | — | カードの失効手続、航空券の再発行手続 |
| 捜索 | — | 遺失物の照会 |
【できないこと】
金銭の供与/遺失物の捜索/クレジットカードの失効手続、航空券の再発行手続代行/現地警察への被害届提出の代行/犯罪の捜査、犯人の逮捕、取締り
カードを止める連絡は、本人かご家族がカード会社へ行います。窓口が代わりに手続きすることはありません。発生直後の順番は海外で盗難に遭ったとき、最初にやること、旅券の手続きと必要書類はパスポートをなくしたときの手続きにまとめています。
3. 事件・事故でけがをしたとき
この場面で在外公館に頼めるのは、相談への対応と、情報・連絡の支援です。
- 日本人がよく行く病院や、日本語の通じる医師などの紹介
- 弁護士や通訳の情報提供
- 本人が連絡できないとき、本人に代わって病状などを家族へ連絡すること
- 家族が現地へ向かうときの、旅券の優先発給の要請
- 現地で治療ができない場合の、緊急移送に関する助言・支援
費用と交渉は、はっきりと範囲の外に置かれています。
【できないこと】
病院との交渉、医療費・移送費の負担、支払い保証、立て替え
犯罪の捜査、犯人の逮捕、取締り
相手側との賠償交渉
治療費は立て替えられない
窓口が医療機関へ支払うことも、支払いを保証することもありません。支払いは、受診した本人か、本人に代わって手配する人が行います。
国ごとの費用の水準は海外の医療費はどれくらいかかるのか、帰国後に公的医療保険へ請求する手続きは海外療養費の申請方法にあります。日本で連絡を受けた家族の動き方は家族が海外で入院・事故にあったと連絡が来たら、会社が連絡を受けたときの整理は出張者が現地で入院したときの、会社の対応をご覧ください。
交通事故では、相手方とのやりとりが残ります。手続きの流れは海外で交通事故に遭ったときにありますが、賠償の交渉は在外公館の範囲外で、当サイトでも個別の事案の方針は扱いません。弁護士や、現地の手続きを扱う専門家に相談してください。
4. 逮捕・拘禁されたとき
身柄を拘束された場合、在外公館に頼めることは次の範囲です。
- 領事による本人との面会、または連絡
- 家族と連絡がとれないとき、本人に代わって家族へ連絡すること
- 弁護士や通訳の情報提供
- 差別的、非人道的な扱いを受けている場合に、関係当局へ改善を要求すること
処分そのものに働きかけることはできません。
【できないこと】
釈放や減刑等の要求(適正な法手続がとられている限り、関係当局に対して、特別な扱いを求めることはできません。)
弁護士費用、保釈費用、訴訟費用の負担、貸付け及びその保証
取調べや裁判における通訳・翻訳
通訳者の情報は提供されますが、取調べや裁判の場で領事が通訳を務めることはありません。弁護人の選任と手続きの進め方は、本人と現地の弁護士が決めます。
5. 大規模な災害・騒乱が起きたとき
緊急事態では、在外公館は安否の確認と情報提供、退避の支援を行います。
| 区分 | 在外公館に頼めること | 範囲に入らないこと |
|---|---|---|
| 安否 | 発生地に滞在する日本人の安否の確認 | — |
| 支援 | 生命・身体に被害がある場合の、関係機関への連絡 | — |
| 情報 | 危険情報の発出、退避方法についての情報提供 | — |
| 費用 | — | 退避費用の負担 |
退避費用は自己負担が原則ですが、外務省は、現金を持ち合わせていない場合に在外公館へ相談するよう案内しています。
安否の確認は、登録された情報をもとに行われます。
緊急時の安否確認をスムーズに行うためにも、「たびレジ」の登録(3か月以内の短期渡航の場合)または、「在留届」の提出(3か月以上の長期滞在の場合)をお願いします。
「たびレジ」は、滞在先の最新の安全情報などを日本語のメールで受け取れる外務省のサービスです。登録した情報は、お住いの地域で事件や事故、自然災害等が発生し、管轄地域の在外公館が安否確認を行う際にも利用されます。
アメリカ本土の記載ですが、仕組みは渡航先によりません。登録がなければ、在外公館は滞在を把握できません。2つの制度の違いはたびレジと在留届は何が違うのか、登録したあとに届くものはたびレジに登録すると、何が届くのかで確かめられます。
6. 連絡する前にそろえておくもの
最寄りの日本国大使館・総領事館の連絡先を確認する
国・地域別のページに、警察・消防・救急の番号と窓口の連絡先があります。
旅券番号と発行年月日を伝えられるようにする
本人確認と、旅券の失効・発給の手続きで使います。写しを手元と家族の双方に置いておくと、失ったあとでも答えられます。
滞在先と、日本側の連絡先を控える
宿泊先、現地で使える電話番号、家族や会社の窓口です。
すでに受けた届出の控えを用意する
警察の受理番号、医療機関で受け取った書類など、手元にあるものを先に整理します。
国別の緊急連絡先は国・地域別の緊急連絡先にあります。誰が誰に連絡するかを先に決めておくなら、緊急連絡カード・連絡フロー作成で1枚にまとめられます。
使えるツールトラブル対処フロー
7. まとめ
| 場面 | 在外公館に頼めること | 自分で手配すること |
|---|---|---|
| 盗難・紛失 | 届出方法の案内、旅券・渡航書の発給 | 被害届の提出、カードの失効手続 |
| 事件・事故 | 医療機関や弁護士の情報、家族への連絡 | 治療費の支払い、相手方とのやりとり |
| 逮捕・拘禁 | 領事の面会、弁護士・通訳の情報 | 弁護人の選任、費用の手当て |
| 災害・騒乱 | 安否確認、情報提供、退避の支援 | 退避にかかる費用 |
公的な窓口で扱えるのはここまでです。会社の渡航の形に合わせた整理が必要な場合は、個別にご相談ください。
関連情報
出典
- 外務省「大使館・総領事館にできること、できないこと」 https://www.anzen.mofa.go.jp/pamph/pdf/dekiru-koto.pdf (2026-10-22 取得)
- 外務省 海外安全ホームページ「安全対策基礎データ(フランス)」 https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcsafetymeasure_170.html (2026-10-22 取得)
- 外務省 海外安全ホームページ「安全対策基礎データ(アメリカ本土)」 https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcsafetymeasure_221.html (2026-10-22 取得)
領事サービスの内容や手数料、手続きに必要な書類は改定されることがあります。渡航の前後には、外務省および渡航先の日本国大使館・総領事館の最新の案内を確認してください。
監修:真下 恭徳(リスクコンサルタント/株式会社キール)
株式会社キールにて、法人のリスク管理と損害保険の実務に従事。事故対応と保険金請求の実務経験をもとに、海外で起きるトラブルへの備えを整理しています。
株式会社キール(〒242-0006 神奈川県大和市南林間1丁目8番17号 レントールビル3階C号室)/ 引受保険会社:AIG損害保険株式会社