海外トラブルと備え

海外療養費の申請方法|必要書類・計算の例・2年の期限

公開日 2026-09-15 / 最終更新日 2026-09-29

この記事のポイント

  • 支給額は日本国内で同じ治療を受けた場合を基準に計算され、現地で払った額より大幅に少なくなることがある
  • 様式A・Bは現地の医師・医療機関の記入が必要なため、渡航前に印刷して持っていく
  • 申請の期限は、海外で治療費を支払った日の翌日から2年

海外で治療を受けたとき、公的医療保険から費用の一部が支給される仕組みを海外療養費といいます。ただし「かかった費用が戻ってくる」制度ではなく、日本国内で同じ治療を受けた場合を基準に計算されます。

支給の対象になるもの・ならないもの

次の2つをどちらも満たす場合に対象になります。

区分対象になる対象にならない
医療行為日本国内で保険診療として認められている医療行為日本国内で保険適用外の医療行為(美容整形やインプラントなど)
渡航の目的治療を目的とした渡航ではないはじめから治療を受けるために渡航した場合

支給される額

支給額は、次のように計算されます。

  • 計算のもとになる額:日本国内の医療機関で同じ傷病を治療した場合にかかる治療費を基準に計算した額。実際に海外で支払った額のほうが低いときは、その額
  • 支給される額:上の額から、自己負担相当額を差し引いた額
海外で支払った額現地の医療費(水準は国によって大きく違います)日本国内の基準で計算した額支給される部分差額が手元に残る※ 実際に支払った額のほうが低いときは、その額が基準になります
支給額は日本国内の基準で計算されます。現地の医療費の水準が日本より高い国では、差額が手元の負担として残ります。棒の長さは関係を示すためのもので、実際の比率ではありません。

最も誤解されやすい点

支給額は、現地で支払った額とは一致しません。現地の医療費の水準が日本より高い国では、差額が手元の負担として残ります。

国ごとの医療費の水準は国・地域別の治安・渡航情報で確認できます。公的な資料に書かれている具体的な金額は海外の医療費はなぜ高い?にまとめています。

計算の例

計算の流れを、仮の数字で示します。実際の「日本国内で同じ治療をした場合の額」は、協会けんぽなどの保険者が審査して決めるもので、申請する側では計算できません。

  1. 現地で払った額を、円に換算する

    外貨で払った医療費は、支給決定日の外国為替換算率(売レート)で円に換算されます。支払った日のレートではありません。

  2. 日本国内で同じ治療をした場合の額と比べ、低いほうを「計算のもとになる額」にする

  3. そこから、自己負担相当額を差し引いた額が支給される

項目例1:現地の医療費が高い例2:現地の医療費が安い
現地で払った額(円に換算)150,000円8,000円
日本国内で同じ治療をした場合の額(仮)20,000円10,000円
計算のもとになる額(低いほう)20,000円8,000円
自己負担相当額(例として3割)6,000円2,400円
支給される額14,000円5,600円
払った額のうち、戻らない額136,000円2,400円

例1のようなことが起きる理由

協会けんぽは「日本と海外での医療体制や治療方法等が異なるため、海外で支払った総額から自己負担相当額を差し引いた額よりも、支給金額が大幅に少なくなることがあります」と案内しています。

自己負担相当額の割合は、年齢などによって変わります。表の3割は計算の例です。

申請に必要な書類

申請までの流れ

  1. 渡航前に、様式Aと様式Bを印刷して持っていく

    帰国後に海外の病院へ依頼して取り直すのは、言語と時差と郵送の問題が重なって難しくなります。

  2. 受診したら、現地の医師・医療機関に様式を記入・署名してもらう

    様式Aは現地の医師、様式Bは現地の医療機関が記入・署名します。歯科の場合は、様式Cを現地の歯科医師が記入・署名します。

  3. 領収書の原本を受け取り、日本語訳を付ける

    翻訳文の書き方は、下の「翻訳文について」のとおりです。

  4. 支払いをした日の翌日から2年以内に申請する

    期限を過ぎると、時効により申請できなくなります。

書類の一覧

協会けんぽの場合、次のものが必要です。

用意する人書類
現地の医師様式A(診療内容明細書)に記入・署名
現地の医療機関様式B(領収明細書)に記入・署名。領収書の原本
現地の歯科医師歯科の場合、様式C(歯科診療内容明細書)に記入・署名
翻訳者領収書の日本語訳(翻訳は本人でも可)
本人海外療養費支給申請書、同意書、パスポート・査証・航空チケットのコピー

加入先が健康保険組合や国民健康保険の場合、様式の名称や運用が異なることがあります。ご自身の保険者の案内を確認してください。

様式を頼むときに伝えること

様式A〜Cは、本人や家族は記入できません。担当医に記入と署名を頼みます。協会けんぽは、次の点を注意事項に挙げています。

伝えること協会けんぽの案内
様式A傷病名と疾病分類番号は必ず書いてもらう
様式B通貨の単位は必ず書いてもらう
枚数1か月ごと、受診者ごと、医療機関ごと、入院・外来ごとに1枚ずつ
書き方できるだけ詳しく書いてもらう(審査でとても重要な書類のため)

様式A・Bは、英語・韓国語・中国語・タイ語・ベトナム語・スペイン語・ポルトガル語の版があります(様式Cは英語・韓国語・中国語・スペイン語・ポルトガル語)。行き先の言葉の版を印刷して持っていくと、頼みやすくなります。同じ項目が書かれていれば、医療機関の独自の書式でもかまいませんが、日本語訳は必ず付けます。

毎回付ける書類

渡航期間が確認できる書類(パスポートの顔写真のページと出入国スタンプのページのコピーなど)と同意書は、申請のたびに必要です。協会けんぽは、付け忘れが多いと注意しています。

翻訳文について

  • 添付する翻訳文には、翻訳者が署名し、住所および電話番号を明記します
  • 本人や家族が訳しても差し支えありません。その場合も、署名と連絡先の記載は必要です

申請してから支給まで

  • 審査には、通常数か月かかります。保険者から本人や現地の医療機関に問い合わせることがあります
  • 海外の口座には振り込まれません。海外に住んでいる人は、勤務先(事業主)か日本に住む家族に受け取りを委任し、申請書の受取代理人の欄に書きます
  • 協会けんぽの場合、申請書はどの支部に出しても、担当の神奈川支部に回されます。電子申請もできます

申請の期限は2年

海外で治療費の支払いをした日の翌日から2年を過ぎると、時効により申請できなくなります。

入院が長引いて複数回にわたって支払った場合は、それぞれの支払日から起算します。

業務中のけが・病気の場合

業務上の負傷・疾病は、健康保険ではなく労災保険の枠組みになります。

海外出張中か海外派遣中かで扱いが変わるため、海外出張と海外派遣で労災はどう違うかを確認してください。

この制度でどこまで対応できるか

海外療養費は、日本国内の基準で計算した額を支給する制度です。次の費用は、この制度の対象ではありません。

  • 現地の医療費が日本より高い場合の、その差額
  • 搬送・通訳・家族の渡航にかかる費用

そうした費用への備えをどうするかは、渡航の条件によって変わります。個別のご相談はお問い合わせから承っています。


出典

制度の内容は改定されることがあります。手続きの際は、加入している保険者の最新の案内を確認してください。

監修:真下 恭徳(リスクコンサルタント/株式会社キール)

株式会社キールにて、法人のリスク管理と損害保険の実務に従事。事故対応と保険金請求の実務経験をもとに、海外で起きるトラブルへの備えを整理しています。

株式会社キール(〒242-0006 神奈川県大和市南林間1丁目8番17号 レントールビル3階C号室)/ 引受保険会社:AIG損害保険株式会社

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