海外で交通事故に遭ったときの対応|通報・記録・帰国後の手続き
公開日 2026-10-20
この記事のポイント
- 通報と現場検証を先に済ませ、警察官が来るまで車両を動かさない
- 事故の証明書・相手方の情報・現場の写真は現地でしか残せない
- 海外療養費の申請では負傷原因届と第三者行為による傷病届が加わる
海外で交通事故に遭ったときは、その場で現地の警察に通報し、警察官が来るまで車両を動かさないのが基本の順番です。けがの手当てと、現場でしか残せない記録を先に済ませてから、帰国後の手続きに移ります。
立場別に、先に読むところ
使えるツールトラブル対処フロー
1. 発生直後にやること
けが人の安全を確かめ、救急に連絡する
車道上で危ないときは、安全な場所へ移ります。救急と警察の番号は国ごとに違います(国・地域別の治安・渡航情報)。
現地の警察に通報し、現場検証を受ける
軽い接触でも通報します。通報しないと罰せられることがあります。
警察官が来るまで車両を動かさない
交通量の多い交差点などでは、例外的に脇に寄せる扱いもあります。
相手方の氏名・連絡先・車両情報と、現場の写真を残す
§2 の記録です。あとから集め直せません。
外務省は、ドイツの案内で事故の処理の手順を次のように示しています。
(ア)事故を起こしたら、些細なものであってもすぐにその場で車両を止め、エンジンを切ってください。なお、けが人がいる場合にはその救助を第一に考えてください(救急112番)。
(イ)必ず警察(110番)を呼び、現場検証を受けてください。警察に連絡しないと罰せられる可能性があります。車両は通常動かしませんが、交通量の多い交差点等では例外的に車を脇に寄せることもあります。なお、事故責任については警察が判断しますので、事故相手に対して謝罪と取られるような言葉は一切言わないよう注意してください。
番号や細かい運用は国ごとに違います。渡航先の案内は国・地域別の治安・渡航情報から確認できます。
その場で決めないこと
責任の判断は、現地の警察とその国の手続きが行います。示談の進め方や過失割合の見方は、個別の事情で変わるため当サイトでは扱いません。判断が必要な場面では、現地の弁護士や、帰国後は日本の弁護士にご相談ください。
2. 現地にいる間にしか用意できない記録
交通事故で求められる記録は、4つとも現地でしか手に入りません。帰国してから取り直すのは難しいので、現場と病院を離れる前にそろえます。
| 記録・書類 | どこで受け取るか | 帰国後に用意できるか |
|---|---|---|
| 警察が発行する事故の証明書 | 届け出た現地の警察 | できない |
| 相手方の氏名・連絡先・車両情報 | 事故の現場 | できない |
| 現場の写真と、日時・場所の記録 | 事故の現場 | できない |
| 診断書と治療費の領収書(けががある場合) | 受診した医療機関 | できない |
- 警察の証明書は、その場で通報しないと発行されないことがあります。名称と書式は国によって違います
- 受付番号と担当者の氏名も控えておきます。証明書をその場で受け取れない国があります
- 領収書の原本は手元から離れることがあります。渡す前に撮影しておいてください
目撃者がいるときは、その連絡先も現場で聞いておきます。
(エ)自分に非がないと判断する場合は、目撃者を確保してください。通行人や自車の後方を走行していた車のドライバー等、誰でもかまいません。住所、氏名を聞き、証人になってもらうことにつき同意を得ておくとよいでしょう。
トラブルごとに必要になる書類はトラブル対処フローでも調べられます。
3. 大使館・総領事館に頼めること、頼めないこと
日本国大使館・総領事館は、情報の提供と連絡の支援を行う窓口です。相手方との交渉や費用の立替えは行いません。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 頼めること | 弁護士や通訳の情報の提供、医療機関の情報の提供、家族への連絡の支援、現地警察への連絡の助言 |
| 頼めないこと | 病院との交渉、医療費・移送費の負担や立替え、犯罪の捜査、相手側との賠償交渉 |
外国にはそれぞれ独自の法制度があり、日本人が関係する事故や犯罪についても、その国の法律が適用され、その国の行政・司法手続に従って解決する必要があります。
家族が日本で連絡を受けた場合にやることは、家族が海外で入院・事故にあったと連絡が来たらにまとめています。
4. 帰国後の手続き
けがの治療費を現地で支払ったときは、公的医療保険の海外療養費を申請できます。計算の仕組みと共通の書類は海外療養費の申請方法にあります。
交通事故は相手のいる事故なので、共通の書類に加えて提出するものがあります。
| 場面 | 追加で求められる書類 |
|---|---|
| けが(負傷)による申請 | 負傷原因届 |
| 相手方(第三者)の行為によるけが | 第三者行為による傷病届 |
| 業務中・通勤中で、労災の給付を請求中 | 労働基準監督署への照会に関する同意書 |
申請の期限は決まっています。
海外で治療費の支払いをした翌日から2年を経過すると、時効により申請できなくなります。
加入先が健康保険組合や国民健康保険のときは、様式の名称や運用が異なることがあります。自分の保険者の案内を確認してください。
出張中の事故なら、労災の手続きも関わります。労災の区分は、滞在の長さではなく働き方の実態で決まります。考え方は海外出張中のけが・病気は労災になるか、出張か派遣かの判定は海外出張か海外派遣か 判定チャートで確認できます。
5. 移動手段の選び方と、会社が決めておくこと
移動手段の選び方は、外務省の国別の案内でもたびたび触れられています。アメリカ本土の案内では、空港や駅での声かけに応じないことと、乗る前の照合を求めています。
主要都市の空港や駅において、正規のタクシー乗り場や配車アプリの指定場所以外で、「タクシー?」などと声をかけてくる無許可営業の車(いわゆる白タク)による被害が報告されています。法外な料金を請求されたり、強盗被害に発展するリスクもあります。客引きには絶対に応じず、必ず正規のタクシー乗り場を利用するか、配車アプリを通じて車両を呼び、乗車前にアプリ画面に表示されたナンバープレートと一致するか確認してください。
判断の軸は3つです。
| 軸 | 見るところ |
|---|---|
| 呼び方 | 正規の乗り場か、アプリで呼んだ車か |
| 照合 | 乗る前に、表示されたナンバーと運転手が一致するか |
| 共有 | 行き先と経路を、同行者や家族と共有しているか |
配車アプリの登録と決済の設定は、渡航前に済ませておけます(海外渡航前の準備チェックリスト)。
出張の場合、会社が決めておくこと
移動のきまりを会社のルールにしておくと、出張者が現地で迷いません。
使う移動手段を決める
正規のタクシー、配車アプリ、送迎のどれを使うかを示します。
立ち入りを避ける地域を共有する
外務省の危険情報の区分をそのまま使い、自前で言い換えません。
夜間や単独の移動の扱いを決めておく
出発・到着の連絡先と、連絡がつかないときの手順を決める
役割分担は緊急連絡カード・連絡フロー作成で作れます。
規程への書き方は海外出張規程の作り方、会社が負う義務の考え方は海外出張と安全配慮義務にあります。
使えるツール海外渡航リスクチェック
6. まとめ
| いつ | やること |
|---|---|
| その場で | けがの手当て → 現地の警察に通報 → 警察官が来るまで車両を動かさない |
| 現地にいる間に | 事故の証明書、相手方の情報、現場の写真、診断書と領収書をそろえる |
| 帰国後に | 海外療養費の申請(支払いの翌日から2年)。出張中なら労災の手続きも確認する |
事故の起き方は選べませんが、移動手段の決め方と、現場で残す記録は先に決めておけます。
関連情報
出典
- 外務省 海外安全ホームページ「安全対策基礎データ(ドイツ)」 https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcsafetymeasure_165.html (2026-10-06 取得)
- 外務省 海外安全ホームページ「安全対策基礎データ(アメリカ本土)」 https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcsafetymeasure_221.html (2026-10-06 取得)
- 外務省「大使館・総領事館にできること、できないこと」(2025年1月) https://www.anzen.mofa.go.jp/pamph/pdf/dekiru-koto.pdf (2026-10-19 取得)
- 全国健康保険協会「海外療養費」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/overseas_medical_expenses/index.html (2026-10-19 取得)
手続きや現地の運用、必要な書類は変わることがあります。渡航の前後には、外務省および渡航先の日本国大使館・総領事館の最新の案内を確認してください。
監修:真下 恭徳(リスクコンサルタント/株式会社キール)
株式会社キールにて、法人のリスク管理と損害保険の実務に従事。事故対応と保険金請求の実務経験をもとに、海外で起きるトラブルへの備えを整理しています。
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