海外トラブルと備え

海外出張規程の作り方|盛り込む項目とサンプル条項(安全・緊急時)

公開日 2026-09-29

この記事のポイント

  • 規程は渡航の判断・出発前・滞在中・緊急時・費用の5つの領域で考える
  • 渡航の可否は、外務省の危険情報のレベルごとに社内の承認を決めておく
  • 旅費・日当は全員に同じ基準で、同業・同規模の会社とかけ離れない額にする

海外出張規程は、旅費と日当のルールであると同時に、出張者の安全を会社の仕組みにする文書です。国内の出張旅費規程を流用すると、治安・医療・緊急時の定めが抜けがちです。

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1. 規程で決めておく5つの領域

領域決めておくこと
渡航の判断誰が承認するか。外務省の危険情報と連動した渡航の可否。延期・中止を決める人
出発前渡航先の情報の確認、たびレジへの登録、健康面の確認、会社への届出
滞在中定期連絡の方法と頻度、危険な地域や夜間の移動の扱い
緊急時第一報の窓口(時差を考えた当番と代理)、家族への連絡役、緊急帰国の判断
費用旅費・日当の基準、緊急時の医療費・搬送費用・帰国費用の立替と負担

抜けやすいところ

旅費の精算ルールだけでは、緊急時と費用の定めが抜けます。事故が起きてから決めることにならないよう、先に決めておきます。

2. 渡航の判断を、外務省の危険情報と結びつける

外務省は、国・地域ごとに4段階の危険情報を出しています。

「レベル1:十分注意してください。」その国・地域への渡航,滞在に当たって危険を避けていただくため特別な注意が必要です。
「レベル2:不要不急の渡航は止めてください。」その国・地域への不要不急の渡航は止めてください。渡航する場合には特別な注意を払うとともに,十分な安全対策をとってください。
「レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)」その国・地域への渡航は,どのような目的であれ止めてください。
「レベル4:退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)」その国・地域に滞在している方は滞在地から,安全な国・地域へ退避してください。

出典:外務省 海外安全ホームページ「「危険情報」とは?」(2026-09-29 に利用)

同じページで外務省は、企業などが人を派遣する場合は、渡航の判断や取るべき安全対策が個人の旅行とは異なることを前提にしています。

安全対策のための知見や能力も限定的な個人渡航者と,最新情報や専門的知識に基づき組織的な安全対策を講じている旅行会社による企画旅行,さらには機関や企業による派遣事業との間でも,渡航すべきか否かの判断や,渡航する場合に取るべき安全対策の内容も異なってくることが想定されます。

出典:外務省 海外安全ホームページ「「危険情報」とは?」(2026-09-29 に利用)

そのため規程では、レベルごとに社内で何をするか(誰の承認が要るか、原則として行かないか)を決めておきます。危険情報は国の一部の地域だけに出ていることもあるので、国単位ではなく行き先の地域で判断します。

レベルだけで決めない

外務省は「重要なのは、4つの目安そのものよりむしろ本文です」としています。承認のときは、危険情報の本文と安全対策基礎データも読みます。行き先の情報は国・地域別の治安・渡航情報でも確認できます。

3. 安全の条項の例

旅費の規程に足す形で使える、安全に関する条項の例です。

海外出張規程に足す「安全の条項」の例

第〇条(渡航の判断)

1 出張先の地域に外務省の危険情報が出ているときは、次のとおりとする。
 レベル1:出張者は、出発前に外務省の危険情報と安全対策基礎データを確認する
 レベル2:〇〇の承認を得る
 レベル3・レベル4:原則として出張しない
2 出張中に危険情報が引き上げられたときは、〇〇が出張の継続・中止・退避を判断する。

第〇条(出発前の手続き)

出張者は、出発前に次の手続きをする。
 (1) 外務省「たびレジ」に登録し、会社の指定するメールアドレスを追加登録する
 (2) 日程・滞在先・現地での連絡先を〇〇に届け出る

第〇条(滞在中の連絡)

出張者は、〇〇(頻度)ごとに〇〇へ連絡する。会社の窓口は〇〇とし、不在のときは〇〇が代わる。

第〇条(緊急時の対応)

事故・病気・災害などが起きたときは、出張者または同行者が直ちに〇〇へ連絡する。会社は窓口を〇〇に一本化し、家族への連絡は〇〇が行う。

第〇条(健康診断)

本邦外の地域に6か月以上派遣する者には、労働安全衛生規則第45条の2に定める健康診断を行う。

第〇条(労災保険の特別加入)

海外派遣に該当する者については、派遣日の前に特別加入の手続きをする。

第〇条(緊急時の費用)

緊急時の医療費・搬送費用・帰国費用の立替と負担は、別に定める。

第〇条(見直し)

〇〇は、毎年〇月と、出張先の情勢が大きく変わったときに、この規程を見直す。

これは一般的な例です。〇〇の部分は自社に合わせて決めてください。就業規則・社内規程として整えるときは、社会保険労務士などの専門家に確認してください。

業務用の端末と情報の扱い(持ち出し・通信・紛失時)は、海外出張の情報セキュリティを規程に足すときの参考になります。健康診断と特別加入の根拠と手続きは、海外出張と安全配慮義務と海外出張と海外派遣で労災はどう違うかにあります。

4. 旅費・日当の決め方と税務

出張で支給する旅費は、通常必要とされる範囲なら所得税がかかりません。国税庁は、その範囲かどうかを次の2点で判断するとしています。

(1) その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。
(2) その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。

出典:国税庁「所得税基本通達」9-3(非課税とされる旅費の範囲)(2026-09-29 に利用)
決めること考え方
日当・宿泊費役職や行き先の地域ごとに、全員に同じ基準で決める
金額の水準同業種・同規模の会社が一般に支給している額と比べて、かけ離れないようにする
範囲を超えた分通常必要な範囲を超える部分は、給与として課税される(同じ通達 9-4)

個別の金額が適切かどうかは、税理士や所轄の税務署に確認してください。支払い手段・現金・精算のルールと、消費税の扱いは海外出張の経費・カード管理にあります。

5. 作ったあとに回す

  1. 出張者に周知する

    出発前のチェックリストにして、出張のたびに確認できる形にします。渡航前の準備チェックリストも使えます。

  2. 年1回と、情勢が変わったときに見直す

    見直す担当者と時期を、規程そのものに書いておきます(§3 の例の最後の条項)。

  3. 事故やヒヤリハットのあとに見直す

    連絡が実際に機能したか、費用の定めで困らなかったかを確認します(出張者が現地で入院したときの、会社の対応の「起きたあとに見直すこと」)。

6. よくある質問

国内の出張旅費規程があれば、海外用は要りませんか

国内用の規程に、治安・医療・緊急帰国の定めがあるかを確認してください。なければ、旅費の部分は国内用を土台にして、§1 の「渡航の判断」「緊急時」「費用」を海外用として足しておくと、事故のときに迷いません。

出張が年に数回の小さな会社は、何から決めればよいですか

危険情報と結びつけた渡航の承認と、緊急時の窓口と代理の2つから決めると、ほかの項目の土台になります。§3 の例の「渡航の判断」と「緊急時の対応」の条項がそれに当たります。


出典

この記事は一般的な情報で、個別の規程の内容や税務の判断を示すものではありません。法令・通達は改正されることがあります。

監修:真下 恭徳(リスクコンサルタント/株式会社キール)

株式会社キールにて、法人のリスク管理と損害保険の実務に従事。事故対応と保険金請求の実務経験をもとに、海外で起きるトラブルへの備えを整理しています。

株式会社キール(〒242-0006 神奈川県大和市南林間1丁目8番17号 レントールビル3階C号室)/ 引受保険会社:AIG損害保険株式会社

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