海外赴任の準備|住民票・社会保険・税の手続きと出国前の段取り
公開日 2026-10-30
この記事のポイント
- 転出届は出国前にあらかじめ出す届出で期間の線はない
- 国民健康保険と国民年金の資格は転出届に付記して手続きする
- 1年以上の予定の赴任は所得税で非居住者と推定される
海外赴任が決まったら、出国前に片づける手続きは「住民票」「公的医療保険」「年金」「税」の4つに分けて並べると漏れません。窓口も期限もそれぞれ違うので、辞令が出た時点で出国日から逆算します。
立場別に、先に読むところ
使えるツール海外出張・赴任 準備チェック診断
1. 出国前の手続きを、窓口ごとに並べる
赴任の手続きは、市区町村・会社(または年金事務所)・税務署・日本国大使館・総領事館の4つの窓口に分かれています。
どれも出国前に動くものなので、辞令が出た時点で順番を決めておくと、出国直前に重なりません。
辞令が出たらすぐ
滞在の見込み期間を確かめます。期間で要否が変わる手続きがあるためです。会社が持つ手続きと、自分で窓口に出す届出を分けておきます。
出国前(市区町村)
転出届を出します。国民健康保険・国民年金に入っている場合は、同じ届出がその資格の手続きにつながります(§2)。
出国前(会社・年金事務所)
健康保険と厚生年金の扱いを会社に確認します。国民年金の任意加入を選ぶ場合は、出国前なら住んでいる市区町村の窓口で申し出られます(§4)。
最後の給与の前(会社)
所得税の精算に要る申告書を会社に出します。出国の時の状況で判断される控除があります(§5)。
現地到着の90日前から
在留届を出します。3か月以上滞在する場合の届出で、提出先は滞在先を管轄する日本国大使館・総領事館です。
期間の線引きは、制度ごとに違う
3か月以上の滞在なら在留届、6か月以上の派遣なら派遣前の健康診断、1年以上の予定の赴任なら所得税で非居住者と推定される、というように、制度ごとに別の数字が出てきます。労働保険の上で出張と派遣のどちらに当たるかは、期間ではなく働き方の実態で決まるので、海外出張か海外派遣か 判定チャートで確かめてください。
在留届の出し方は在留届の出し方(留学・駐在・帯同のケース別)に、渡航前の準備全体の順番は海外渡航前の準備チェックリストにまとめています。会社が社員を赴任させる場合、どこまでを会社が持つかの考え方は海外出張と安全配慮義務にあります。
2. 住民票は、出国前に転出届を出す
住民基本台帳法は、転出届を「あらかじめ」出すものと定めています。出国してから出す届出ではありません。
(転出届)第二十四条 転出をする者は、あらかじめ、その氏名、転出先及び転出の予定年月日を市町村長に届け出なければならない。
法律は、転出届に滞在期間の線を引いていません。赴任で生活の本拠が日本から移るなら、出国前に届け出ます。
1年以上という数字は所得税で非居住者と推定されるかどうかの目安として出てくるもので(§5)、住民票の届出の基準とは別のものです。
国民健康保険や国民年金に入っている場合は、同じ届出がその資格の手続きにもつながります。
(国民健康保険の被保険者である者に係る届出の特例)第二十八条 この章又は第四章の四の規定による届出をすべき者が国民健康保険の被保険者であるときは、その者は、当該届出に係る書面に、その資格を証する事項で政令で定めるものを付記するものとする。
(国民年金の被保険者である者に係る届出の特例)第二十九条 この章又は第四章の四の規定による届出をすべき者が国民年金の被保険者であるときは、その者は、当該届出に係る書面に、その資格を証する事項その他必要な事項で政令で定めるものを付記するものとする。
つまり、転出届は住所の届出だけで終わりません。国民健康保険証や年金の番号が分かるものを持って窓口へ行くと、一度で済みます。
転出届とあわせてできる手続きは、在留届の出し方(留学・駐在・帯同のケース別)の §5 に挙げています。
3. 公的医療保険は、どちらに入っているかで変わる
公的な医療保険は、勤務先を通じて入る健康保険と、市区町村の国民健康保険で扱いが分かれます。まず自分がどちらかを確かめます。
| 区分 | 赴任中の扱い | 出国前にすること |
|---|---|---|
| 健康保険 | 勤務先との関係が続くかどうかで変わる | 会社の担当に扱いを確認する |
| 国民健康保険 | 転出届で資格の手続きが要る | 届出の書面に資格を証する事項を付記する |
勤務先の健康保険に入ったままで赴任し、現地でやむを得ず受診した場合は、海外療養費という制度の対象になることがあります。
海外療養費制度は、海外旅行中や海外赴任中に急な病気やけがなどによりやむを得ず現地の医療機関で診療等を受けた場合、申請により一部医療費の払い戻しを受けられる制度です。
海外療養費の支給対象となるのは、日本国内で保険診療として認められている医療行為に限られます。
療養(治療)を目的で海外へ渡航し診療を受けた場合は、支給対象となりません。
払い戻される額は、同じ傷病を日本国内の医療機関で治療した場合を基準に計算されます。現地で支払う額がそのまま戻る仕組みではありません。
申請の書類と流れは海外療養費の申請に、渡航先ごとの医療費の水準は海外の医療費はどのくらいかかるかにまとめています。公的制度で見られる範囲はここまでで、その先の備えは個別のご相談になります。
4. 年金は、加入している制度で手続きが変わる
勤務先を通じて厚生年金に入っている場合、赴任中の扱いと、渡航先の国の制度にも加入が要るかどうかは、会社と年金事務所に確認します。国によって扱いが違います。
海外に住むことになって国民年金の強制加入の対象から外れる場合は、任意加入という選択ができます。
海外に居住することになった方は、国民年金の強制加入被保険者ではなくなりますが、日本国籍の方であれば、国民年金に任意加入することができます。国民年金に任意加入している方を任意加入被保険者といいます。
提出する書類/国民年金被保険者関係届書(申出書)
(1)これから海外に転出する方/お住まいの市区町村窓口
(2)すでに海外に居住している方/国内協力者がいる方/日本における最後の住所地を管轄する市区町村窓口
任意加入被保険者の方が帰国し、日本国内に住所を有した(住民票への登録)場合は、国民年金の強制加入被保険者となります。
窓口は、出国前と出国後で変わります。出国前に申し出ておくと、住んでいる市区町村の窓口で済みます。
| 時期 | 申し出る窓口 |
|---|---|
| 出国前 | 住んでいる市区町村の窓口 |
| 出国後(国内に協力者がいる) | 日本での最後の住所地を管轄する市区町村の窓口 |
| 出国後(国内に協力者がいない) | 日本での最後の住所地を管轄する年金事務所 |
帰国して日本国内に住所を置くと、強制加入に戻るための手続きが改めて要ります。帰任の予定が立った時点で、年金事務所に確認してください。
5. 税は、1年以上の予定かどうかで扱いが変わる
所得税は、居住者と非居住者のどちらに当たるかで課され方が変わります。1年以上の予定の赴任は、原則として非居住者と推定されます。
日本国内の会社に勤めている給与所得者が、1年以上の予定で海外の支店などに転勤しまたは海外の子会社に出向したりする場合があります。このように国外に居住することとなった人は、国外における在留期間があらかじめ1年未満であることが明らかな場合を除いて原則として、所得税法上の非居住者と推定されます。
海外に転勤または出向をする人については、居住者としての最後の給与支給の際に年末調整によって、源泉徴収された所得税および復興特別所得税を精算する必要があります。
なお、給与収入が2,000万円超の人や主たる給与以外に一定の収入があるなど確定申告が必要な人が「出国」(納税管理人の届出をしないで国内に住所及び居所を有しないことになることをいいます。)するときは、その「出国」の時までに確定申告(準確定申告)をしなければなりません。
控除対象扶養親族などになるかならないかは、出国の時の現況で判断します。
会社からの給与だけの方は、居住者としての最後の給与のときに会社が精算します。申告書の提出が要るので、最後の給与日より前に会社の担当に声をかけます。
給与以外に収入がある方や、給与収入が 2,000万円を超える方は、出国までに申告が必要になる場合があります。出国後の申告や税務署からの書類の受け取りを誰が行うかも、あわせて決めておきます。
個別の税額や住民税の扱いは、出国の時期と所得の内容で変わります。当サイトでは個別の判断はしないので、所轄の税務署と、住んでいた市区町村に確認してください。
6. まとめ
| 時期 | すること | 窓口 |
|---|---|---|
| 辞令が出たら | 滞在の見込み期間を確かめ、会社が持つ手続きを切り分ける | 会社 |
| 出国前 | 健康保険・厚生年金の扱いを確認する | 会社・年金事務所 |
| 出国前 | 国民年金の任意加入を申し出る(対象になる場合) | 市区町村 |
| 出国前 | 転出届を出す。国民健康保険・国民年金の資格も付記する | 市区町村 |
| 最後の給与の前 | 所得税の精算に要る申告書を出す | 会社 |
| 到着の90日前から | 在留届を出す(3か月以上の滞在) | 日本国大使館・総領事館 |
| 帰任が決まったら | 強制加入に戻る手続きと、税の扱いを確認する | 市区町村・年金事務所・税務署 |
住民票・公的医療保険・年金・税は、どれも「生活の本拠がどこにあるか」で扱いが決まります。期間の線引きは制度ごとに違うので、出国日から逆算して、窓口ごとに分けて進めてください。
関連情報
海外旅行保険のご案内
半年を超える渡航は、インターネットではお手続きいただけません。個別にご案内しますので、お問い合わせください。
株式会社キールはAIG損害保険株式会社の取扱代理店です。
引受保険会社:AIG損害保険株式会社
出典
- 住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)第二十四条・第二十八条・第二十九条 https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000081 (2026-10-29 取得)
- 全国健康保険協会「海外療養費」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/overseas_medical_expenses/index.html (2026-10-29 取得)
- 日本年金機構「国民年金の任意加入の手続き(日本の年金制度への継続加入)」 https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/kanyu/20140627-02.html (2026-10-29 取得)
- 国税庁 タックスアンサー No.1920「海外勤務と所得税額の精算」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1920.htm (2026-10-29 取得)
制度や手続きは変わることがあります。手続きの際は、各機関の最新の案内を確認してください。
監修:真下 恭徳(リスクコンサルタント/株式会社キール)
株式会社キールにて、法人のリスク管理と損害保険の実務に従事。事故対応と保険金請求の実務経験をもとに、海外で起きるトラブルへの備えを整理しています。
株式会社キール(〒242-0006 神奈川県大和市南林間1丁目8番17号 レントールビル3階C号室)/ 引受保険会社:AIG損害保険株式会社