海外出張の情報セキュリティ|公衆Wi-Fi・端末の紛失・入国時の検査
公開日 2026-09-29
この記事のポイント
- 公衆Wi-Fiは接続先のSSIDとURLを確かめ、自宅・職場以外への自動接続をオフにする
- 会社は持ち出し・データ・通信・物理管理・紛失時の5つをルールにしておく
- 技術資料を持って出張するときは、外為法の許可が要るかを確認する
出張に出ると、業務用のパソコンとスマートフォンは社内のネットワークの守りの外に出ます。空港やホテルの公衆Wi-Fi、端末の紛失、入国時の検査、技術情報の持ち出しの4つを、出発前に会社のルールにしておくのが要点です。
立場別に、先に読むところ
使えるツール海外出張・赴任 準備チェック診断
1. 公衆Wi-Fiで気をつけること
総務省は、公衆Wi-Fiを使うときの注意をまとめています。偽の公衆Wi-Fiに接続してIDやパスワードを盗まれる例が報告されています。
偽の公衆Wi-Fiが、SNSのログイン画面を模した偽の入力画面に誘導して、ID・パスワードなどの入力情報をだまし取る例が報告されています。よく知っている(使ったことがある)SSID(ネットワーク名)であっても、偽の公衆Wi-Fiが設置されていることがあります。
接続する前に、提供者が案内しているSSIDと同じか確かめる
提供者が分からないもの、不審なものには接続しません。
自宅・職場以外のWi-Fiへの自動接続をオフにする
意図せず不審なWi-Fiにつながるのを防ぎます。
IDやパスワードを入れる前に、URLが正しく「https://」で始まるかを見る
本物に似せた偽のURLもあるので、URL全体を確認します。
暗号化なし・WEPのWi-Fiでは、ログインや個人情報の入力をしない
「セキュリティ(暗号化)なし」や「WEP」と表示されている場合は、個人情報やオンラインサービスのログイン情報の入力などの周囲に見られてはいけない情報を扱うような利用は避け、通信内容が周囲に見られても構わない場合に限って利用しましょう。
2. 会社が決めておく5つのルール
| 領域 | 決めておくこと |
|---|---|
| 持ち出し | 持ち出してよい端末(会社が貸与したものに限るか)、私物端末の扱い、持ち出しの承認 |
| データ | 出張に必要なデータだけを持つ。端末の暗号化、画面ロック(パスコード・生体認証) |
| 通信 | 業務で使ってよい通信手段(モバイル通信、会社が用意したルーター、VPN など)と、公衆Wi-Fiの扱い |
| 物理管理 | 端末から目を離さない、車内や荷物に置いたままにしない、のぞき見防止のフィルター |
| 紛失時 | 報告先(時差を踏まえた当番と代理)、遠隔ロックやパスワード変更の手順、報告の期限 |
一番効くのは「持ち出さない」こと
端末に入っていない情報は、なくしても盗まれても漏れません。出張に必要な資料だけを持ち、残りは社内に置いておきます。
ルールは、海外出張規程に入れておくと出張のたびに確認できます(海外出張規程の作り方)。
3. 端末をなくした・盗まれたとき
気づいた時点で、会社の窓口に第一報を入れる
報告が遅れるほど、遠隔ロックが間に合わなくなります。報告の早さを責めない運用にしておくことが大切です。
会社側で遠隔ロック・パスワード変更を行う
スマートフォンは「端末を探す」機能でロックします。SIMの不正利用を防ぐため、通信会社にも連絡します。
盗難なら現地の警察に届け出て、控えを受け取る
手順は海外で盗難に遭ったとき、最初にやることにあります。
なくした端末に入っていた情報の範囲を記録する
取引先への連絡が必要かどうかを、会社が判断する材料になります。
4. 入国時に端末を調べられることがある
国によっては、入国の際に端末の中身を確認されることがあります。米国の税関・国境警備局(CBP)は次のように案内しています。
All travelers crossing the United States border are subject to CBP inspection. On rare occasions, CBP officers may search a traveler's mobile phone, computer, camera, or other electronic devices during the inspection process. (...) In FY 2025, out of the over 419 million travelers CBP processed at ports of entry, CBP only searched the electronic devices of 55,318 international travelers.
米国に入国するすべての人はCBPの検査の対象で、まれに携帯電話やパソコンなどの端末が調べられる、という内容です。2025会計年度に端末を調べられたのは、約4億1,900万人のうち5万5,318人でした。
ここが大事
入国審査で見られて困る情報は、持ち込まないのが原則です。§2 の「必要なデータだけを持つ」と同じ考え方です。
5. 技術情報を持って出張するとき
技術資料が入った端末を持って出張したり、現地で技術指導をしたりする場合は、外為法の安全保障貿易管理の確認が要ることがあります。
経済産業省のQ&Aでは、「海外の子会社の社員向けに、当社の技術者が日本から出張し技術指導を行う予定ですが、留意点はありますか」という質問に、次のように回答しています。
海外子会社およびその社員(日本からの出向者含む)は、非居住者です。この場合、居住者から非居住者への技術提供に当たりますので、その技術が規制されるものかを確認の上、許可要否を判断してください。
規制の対象になる技術かどうか(該非判定)は、社内の輸出管理の担当者、または経済産業省の安全保障貿易管理の窓口に確認してください。
出典
- 総務省「公衆Wi-Fi利用者向け 簡易マニュアル」(令和7年2月版) https://www.soumu.go.jp/main_content/000989921.pdf (2026-09-29 取得)
- U.S. Customs and Border Protection「Border Search of Electronic Devices at Ports of Entry」 https://www.cbp.gov/travel/cbp-search-authority/border-search-electronic-devices (2026-09-29 取得)
- 経済産業省「安全保障貿易管理 Q&A(技術関連)」 https://www.meti.go.jp/policy/anpo/qanda25.html (2026-09-29 取得)
制度や各国の運用は変わることがあります。個別の技術が規制の対象かどうかの判断を示すものではありません。
監修:真下 恭徳(リスクコンサルタント/株式会社キール)
株式会社キールにて、法人のリスク管理と損害保険の実務に従事。事故対応と保険金請求の実務経験をもとに、海外で起きるトラブルへの備えを整理しています。
株式会社キール(〒242-0006 神奈川県大和市南林間1丁目8番17号 レントールビル3階C号室)/ 引受保険会社:AIG損害保険株式会社