労災保険の海外派遣者特別加入
公開日 2026-09-15
海外で働く社員が業務中にけがをしたとき、日本の労災保険が使えるかどうかは、その人が「海外出張者」か「海外派遣者」かで変わります。会社側で最も間違えやすい論点です。
結論
「海外出張」の場合は、海外出張者に関して何ら特別の手続きを要することなく、所属する国内の事業場の労災保険により給付を受けられます。
一方「海外派遣」の場合は、海外派遣者に関して特別加入の手続きを行っていなければ、労災保険による給付を受けられません。
つまり、海外派遣に当たるのに特別加入の手続きをしていなければ、日本の労災保険は使えません。
海外出張者と海外派遣者の定義
- 海外出張者 … 単に労働の提供の場が海外にあるにすぎず、国内の事業場に所属し、その事業場の使用者の指揮に従って勤務する労働者
- 海外派遣者 … 海外の事業場に所属して、その事業場の使用者の指揮に従って勤務する労働者、またはその事業場の使用者(事業主およびその他労働者以外の方)
どちらに当たるかは、勤務の実態で決まる
出張命令書を出していれば出張、という整理はできません。厚生労働省は「勤務の実態によって総合的に判断される」としています。
一般的な例として挙げられているのは次のとおりです。
| 海外出張の例 | 海外派遣の例 |
|---|---|
| 商談 | 海外関連会社(現地法人、合弁会社、提携先企業など)へ出向する場合 |
| 技術・仕様などの打ち合わせ | 海外支店、営業所などへ転勤する場合 |
| 市場調査・会議・視察・見学 | 海外で行う据付工事・建設工事(有期事業)に従事する場合 |
| アフターサービス | |
| 現地での突発的なトラブル対処 | |
| 技術習得などのために海外に赴く場合 |
滞在が短くても、現地法人の指揮下に入って働いていれば派遣と判断されうるという点が実務上の注意点です。「長期出張」という名目で現地法人の業務に従事している人がいる会社は、事故が起きる前に整理しておくべき領域です。
特別加入は、事故の前でなければ間に合わない
特別加入の手続きは、すでに海外に派遣されている人についても行えます。ただし労災として認められるには、災害の発生前に加入していることが前提です。事故が起きてから遡って手続きをすることはできません。
手続きは、申請書を所轄の労働基準監督署を経由して都道府県労働局長に提出します。
この制度でどこまで対応できるか
特別加入は、業務上・通勤による災害を対象とする制度です。業務外の私傷病は対象になりません。その場合は健康保険の海外療養費の枠組みになります。
また、労災保険の給付は日本の基準で行われます。現地の医療費の水準や、搬送・家族の渡航にかかる費用をどう扱うかは、会社の規程で別途決めておく必要があります。実際に出張者が入院したときの会社側の動きは出張者が現地で入院したときの、会社の対応にまとめています。
渡航の目的・期間ごとに会社側の準備に抜けがないかは、海外出張・赴任 準備チェック診断で確認できます。
出典
- 厚生労働省「特別加入制度のしおり(海外派遣者用)」 https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/040324-7.html (2026-09-15 取得)
制度の内容は改定されることがあります。実際の手続きにあたっては、所轄の労働基準監督署の最新の案内を確認してください。個別の事案が海外出張と海外派遣のどちらに当たるか、また労災に該当するかどうかの判断は、所轄の労働基準監督署が行います。