海外出張者の安否確認|会社がたびレジで整える登録と連絡の経路
公開日 2026-10-02
この記事のポイント
- 渡航先の安全情報と緊急時の連絡を受け取る職場のアドレスを決めておく
- 職場のメールアドレスの追加は本人の登録の中で行うので、出発前に済ませてもらう
- 外務省への相談で求められる情報は、出張の届出で先に集めておける
出張者の安否を会社が確かめられるかどうかは、事故や災害が起きてから変えることができません。会社の側で先に決められるのは、渡航先の安全情報と緊急時の連絡を社内の誰が受け取るかと、連絡が取れないときに誰がどこへ相談するかの2つです。
立場別に、先に読むところ
使えるツール海外出張・赴任 準備チェック診断
1. 会社が決めておく3つ
安否を確かめる仕組みは、特別な設備ではなく、次の3つを誰にするかを決めることで形になります。
| 決めること | 中身 |
|---|---|
| 受け取る人 | 渡航先の安全情報と、緊急時の連絡を受け取る社内のメールアドレス |
| 控える情報 | 出張者から出発前に集めておく項目(日程・滞在先・連絡手段・旅券番号) |
| 相談する人 | 連絡が取れないときに外務省・在外公館へ相談する担当と、家族への連絡役 |
追加の登録は、本人のたびレジの中で行う
渡航先の安全情報を会社にも届くようにするには、本人のたびレジの登録に、職場のメールアドレスを追加してもらいます。会社が代わりに足すことはできないので、本人と連絡が取れなくなってからでは間に合いません。出発前に済ませてもらいます。
会社が整えておくこと全体の考え方(安全配慮義務の根拠、派遣前の健康診断)は、海外出張と安全配慮義務にまとめています。
2. 職場のアドレスを追加する、渡航者が多いときは一括で登録する
外務省の「たびレジ」は、登録した本人だけでなく職場のメールアドレスも追加できます。緊急時に外務省が使うのは、この登録された連絡先です。
滞在国や地域で大規模な事件・事故、テロ、自然災害などが発生した場合、被害の状況によっては、外務省が安否確認などのために登録された連絡先に連絡し、必要であれば迅速に支援を行います。
また、海外旅行関連業者など企業の皆様向けに、海外渡航者のデータを一括で登録することができるシステムも提供しています。
職場のアドレスは、共有のものにする
担当者個人のアドレスにすると、不在や異動で情報が止まります。複数人が見られる共有のアドレスを1つ決めて、それを登録してもらいます。
登録してもらう手順を、出張の届出とセットにする
出張のたびに思い出す運用にせず、届出の手続きの一部にします。届出を受けた側が登録の有無を確認できる形にしておきます。
渡航者が多ければ、一括で登録できる仕組みを確認する
企業向けに、渡航者のデータを一括で登録できるシステムが提供されています(上の引用)。自社で使えるかどうかは、外務省の案内で確認します。
担当者自身も、主要な渡航先を登録しておく
日程が決まっていなくても登録できる方法があり、平時から行き先の情報を見られます(下の引用)。
必須項目は「メールアドレス、滞在国、滞在都市、滞在期間、氏名、生年月日、携帯電話番号」です。
「簡易登録」を利用すれば、旅の予定がないかたや日程が決まっていないかたでも、気になる国の最新情報を受け取ることができます。もちろん、全世界を指定することも可能です。
登録に要る項目は、出張の届出で会社が集めている項目とほとんど重なります。届出の様式をこの項目にそろえておくと、同じことを二度聞かずに済みます。
3か月以上の滞在は別の制度になる
3か月以上海外に滞在する人は、たびレジではなく在留届の対象です。期間で分かれるのはこの届出と、派遣前の健康診断(6か月以上)です。
ここが大事
労災保険の扱いは、滞在の期間ではなく働き方の実態で決まります。現地法人の指揮下で働いていれば、短い渡航でも海外派遣と判断されることがあります。どちらに当たるかは海外出張か海外派遣か 判定チャートで確認できます。
3. 規程と連絡の経路に書き足す
決めたことを文書に残しておかないと、担当者が変わった時点で元に戻ります。足す場所は3か所です。
| 書き足す先 | 足す内容 |
|---|---|
| 出張規程 | 出発前にたびレジへ登録し、会社の指定するメールアドレスを追加登録する |
| 出張の届出 | 日程・滞在先・現地での連絡手段・旅券番号を会社に届け出る |
| 連絡の経路 | 第一報を受ける窓口、窓口が不在のときの代理、家族への連絡役 |
規程に入れる条項の書き方は海外出張規程の作り方に例があります。窓口と代理、家族への連絡役を1枚にまとめるには緊急連絡カード・連絡フロー作成が使えます。
旅券番号を控えるかどうか
相談のときに求められる情報には旅券番号が含まれます(§4)。会社が控えるのか、本人と家族が持つのかは、個人情報の扱いとあわせて先に決めておきます。決めずに運用すると、必要な場面で誰も持っていない状態になります。
渡航先の危険情報と安全対策基礎データは、国・地域別の治安・渡航情報の各国ページで原文とあわせて確認できます。大使館・総領事館の電話番号も同じページにあります。
4. 連絡が取れないとき、会社が相談できる先
外務省は、本人と連絡が取れないときの相談先を案内しています。相談のときに手元にそろえておく情報も示されています。
御子息の旅行日程、宿泊先、連絡手段の有無、旅券番号等お判りになる限りの情報をご用意の上、外務省領事局海外邦人緊急事態課(電話:03-3580-3311 内線5138、5139)、又はお近くの在外公館(日本国大使館又は総領事館)に御相談ください。
求められている情報は、出発前に会社が集めておけるものです。
| 区分 | 求められる情報 | 会社のどこにあるか |
|---|---|---|
| 日程 | 旅行日程 | 出張の届出 |
| 滞在先 | 宿泊先 | 出張の届出 |
| 連絡 | 連絡手段の有無 | 出張の届出、緊急連絡カード |
| 旅券 | 旅券番号 | 出張の届出(控えるかどうかは §3 のとおり先に決める) |
出張者と連絡が取れないときは、会社からも上の窓口に相談できます。あわせて、本人の家族と連絡が取れる状態にしておくことも会社側の準備です。家族のほうが本人の最新の予定を知っていることがあり、家族への連絡役を決めておくと、情報を一か所に集められます。
「所在の調査」は別の制度
外務省の「所在調査」は、海外に住んでいる日本人と連絡が途絶えたときに、3親等以内の親族からの依頼で行うものです(外務省「よくある質問集 その他」問6)。出張者の安否の確認とは別の制度なので、混同しないようにします。
家族が連絡を受けたあとに動くことは、家族が海外で入院・事故にあったと連絡が来たらにまとめています。緊急連絡カードに家族の連絡先と連絡役を書いておくと、この場面で探さずに済みます。
入院や事故の一報が入ったあと、会社として判断することの順番は出張者が現地で入院したときの、会社の対応にあります。
5. 年に一度、動くかどうかを確かめる
仕組みは作った時点では確かめられません。次の4点を年に一度見ておくと、必要なときに止まりません。
| 確認 | 見るところ |
|---|---|
| 登録 | 直近の出張で、届出と登録がセットで行われていたか |
| 受信 | 共有のアドレスに、安全情報が実際に届いているか |
| 代理 | 窓口が不在の時間帯に、代理へつながるか |
| 家族 | 家族への連絡役と連絡先が、最新のものになっているか |
受信の確認は、届いたメールを担当者が1件開いてみるだけで済みます。届いていなければ、登録されたアドレスが古いか、迷惑メールとして振り分けられている可能性があります。
会社側の準備に抜けがないかは、海外出張・赴任 準備チェック診断でも確認できます。
出典
- 政府広報オンライン「出発前に登録を! 海外での安心を届ける“たびレジ”」(2025年12月15日) https://www.gov-online.go.jp/article/202512/radio-3335.html (2026-10-01 取得)
- 外務省「よくある質問集 その他」 https://www.mofa.go.jp/mofaj/comment/faq/toko/others.html (2026-09-29 取得)
制度の内容と連絡先は変更されることがあります。実際に相談するときは、外務省および在外公館の最新の案内を確認してください。
監修:真下 恭徳(リスクコンサルタント/株式会社キール)
株式会社キールにて、法人のリスク管理と損害保険の実務に従事。事故対応と保険金請求の実務経験をもとに、海外で起きるトラブルへの備えを整理しています。
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