海外トラブルと備え

持病・常用薬がある人の渡航準備|海外への持ち込み手続きと英文処方箋

公開日 2026-09-25

この記事のポイント

  • 出発の4〜6週間前にかかりつけ医に相談し、処方と英文の書類を頼む
  • 医療用麻薬は出国・入国それぞれ2週間前までに許可申請が要る
  • 渡航先の規制は、日本の手続きとは別に渡航先の在日大使館等へ確認する

持病があり常用薬を持って渡航するときは、薬そのものより先に書類と時期を決めておくと、出発前と現地の両方でつまずきにくくなります。薬の成分によっては日本を出るとき・帰るときに国の許可が要り、渡航先の規制はそれとは別に確認が必要です。

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1. 出発の4〜6週間前に、かかりつけ医に相談する

最初にやることは薬を買い足すことではなく、主治医と話す時間を確保することです。複数回に分けて受ける予防接種も、英文の書類も、直前では間に合わないことがあります。

持病のある方が海外へ渡航するときは、出発の4〜6週間前までにかかりつけ医に相談することがすすめられています。持病が安定しているかを確認し、必要な予防接種を受け、滞在中に必要な薬の処方を受けるためです。医師に書いてもらう紹介状には、現在の症状、主な既往歴、アレルギー、処方されている薬(一般名を含む)、使用している医療機器を簡潔にまとめます。

出典:厚生労働省検疫所 FORTH「旅行前の準備」(2026-09-24 に利用)

この時点で決めておく項目は次の4つです。

項目決めておくこと
薬の量滞在日数分と、数日分の予備。移動が延びたときに切れないようにします
英文書類英文の処方箋、または薬剤証明。薬の一般名(成分名)が入っているものを用意します
英文メモ持病・アレルギー・常用薬をまとめたもの。本人が説明しづらい状態でも、医師に伝わります
予防接種要否は、渡航先と滞在の内容で変わります

渡航の目的・期間・同行者から、この4つを含む項目を期限つきで並べたものは渡航前の準備チェックで確認できます。

2. 日本を出入国するときに手続きが要る薬がある

常用薬の多くは、本人が使う分を持って出入国できます。ただし、医療用麻薬と一部の向精神薬は扱いが別です。

がんの痛みに使う薬や、一部の睡眠薬・抗不安薬などが当てはまります。

区分条件日本側で必要になること
一般的な薬内服薬・外用薬特別な申請はなし
向精神薬1か月分以内の内服薬特別な手続きはなし
向精神薬注射剤、または定められた量を超える場合医師の証明書などの書類(受診時に依頼)
医療用麻薬本人の治療のためでも出国・入国それぞれの許可申請(出国・入国の2週間前まで)

医療用麻薬は、医師から処方を受けた本人が自己の疾病の治療の目的で持つ場合でも、日本から出国するとき・日本へ入国するときのそれぞれについて、事前に地方厚生局麻薬取締部へ申請して許可を得る必要があります。申請先は、住所地(入院中は病院の所在地、海外在住の場合は入国予定の空港)を管轄する麻薬取締部で、出国日・入国日の2週間前までに提出します。向精神薬については、用法・用量に照らして1か月分以内の内服薬であれば手続きは要りませんが、注射剤を携帯する場合や、定められた量を超えて携帯する場合は書類が必要です。

出典:厚生労働省 地方厚生局麻薬取締部「麻薬・覚醒剤原料などを携帯して日本を出入国する方へ」(2026-09-24 に利用)

先に確かめること

自分の薬がどれに当たるかは、名前だけでは判断がつきにくいところです。処方を受けている医療機関か薬局に、「この薬は医療用麻薬・向精神薬に当たるか」を先に確認しておくと、申請が要る場合も2週間前の期限に間に合います。

3. 渡航先の規制は、日本の制度とは別に確認する

日本で問題なく処方されている薬が、渡航先では規制の対象になっていることがあります。

ここが大事

ここは日本側の手続きとは別の話です。日本の許可を取っても、渡航先の可否は決まりません。

渡航先の国では日本と異なる法規制が行われている場合があるため、事前に渡航先の国の在日大使館等に問い合わせて、許可等が必要かどうか、必要な場合はその手続きについても確認する必要があります。また、海外で向精神薬を所持する場合は、違法薬物の所持を疑われるなどのトラブルを避けるため、英文で記載された医師の証明書等を携帯することがすすめられています。

出典:厚生労働省「海外渡航先への医薬品の携帯による持ち込み・持ち出しの手続きについて」(2026-09-24 に利用)

確認先は2つあり、どちらも「大使館・総領事館」ですが、別の窓口です。

確認することどこで確認するか
薬の規制渡航先の国が日本に置いている大使館・総領事館
受診先渡航先の日本国大使館・総領事館が持つ医療機関のリスト
  • 薬の規制の問い合わせ先は日本の役所ではないため、回答までの日数も国によって変わります
  • 受診先は、このリストで確認する方法があります。当サイトでは特定の医療機関をご案内していません

滞在先の医療事情や緊急連絡先は国・地域別の治安・渡航情報にまとめています。

4. 薬の持ち方と、現地で受診することになったときの備え

薬の持ち方

持ち方には、通関と受診の両方に効く決まりごとがあります。

  • 本来の容器・包装のまま持つ。PTP包装の錠剤はそのまま、瓶入りの薬は交付された瓶のままにします。中身が確認できる状態にしておくためです
  • 英文の処方箋・証明書は、薬と同じところに入れる。荷物を分けると、必要な場面で片方しか手元にないことがあります
  • 預け荷物に全部を入れない。機内に持ち込む分を分けておくと、荷物が遅れたときにも服用を続けられます
  • 時差で服用の時刻がずれる点は、出発前に主治医へ確認しておきます

現地で受診したときの書類

滞在中に体調を崩して受診した場合は、その場でしか手に入らない書類があります。帰国後に現地へ依頼して取り直すのは、言語と時差と郵送が重なって難しくなります。

海外療養費の支給申請には、診療内容明細書(様式A)と領収明細書(様式B)が必要です。これらは現地で治療を受けた医療機関に記入してもらう書類です。あわせて、領収書の原本と、日本語の翻訳文の添付が求められます。

出典:全国健康保険協会「海外療養費」(2026-09-15 に利用)

その場でしか手に入らない書類は、次の3つです。

書類中身
様式A・B現地で治療を受けた医療機関に記入してもらう書類
診断書傷病名・治療内容・日付が分かるもの
領収書原本(明細つき)

ここが大事

持病があって受診の可能性を見込んでいるなら、様式A・様式Bを出発前に印刷して持つのが確実です。

原本を渡す前に撮影しておくと、手元に記録が残ります。手続きの流れと期限は海外療養費の申請方法にまとめています。

会社の出張・赴任で渡航する場合、本人が動けない状況では会社側の対応も並行します。受診の一報を受けてからの動き方は出張者が現地で入院したときの、会社の対応で扱っています。

5. まとめ

時期やること
出発4〜6週間前かかりつけ医に相談する。予防接種の要否、滞在日数分+予備の処方、英文書類の依頼
同じころ薬が医療用麻薬・向精神薬に当たるかを確認する。渡航先の在日大使館等へ規制を問い合わせる
出国の2週間前まで医療用麻薬に当たる場合、出国・入国それぞれの許可申請を出す
出発1週間前様式A・様式Bを印刷する。英文メモを用意する
出発直前本来の容器のまま荷造りし、機内に持ち込む分を分ける

常用薬の準備でつまずきやすいのは、薬の量ではなく期限のある手続きのほうです。相談と申請の時期を先に押さえておけば、残りは荷造りの作業として片づきます。

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出典

制度の内容や手続きは改定されることがあります。手続きの際は、各機関の最新の案内を確認してください。

監修:真下 恭徳(リスクコンサルタント/株式会社キール)

株式会社キールにて、法人のリスク管理と損害保険の実務に従事。事故対応と保険金請求の実務経験をもとに、海外で起きるトラブルへの備えを整理しています。

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